2024年4月、KEITA MARUYAMAはデビュー30周年を迎え、1年かけて『丸山百景』プロジェクトを進行しています。その一環として、KEITA MARUYAMA×SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOのコラボレーションが再び実現。このコラボに込めた、特別な想いとは? KEITA MARUYAMAデザイナー・丸山敬太と、SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOデザイナー・川人未帆さんに話を聞きました。
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――KEITA MARUYAMA×SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOのコラボレーションは今回で3回目となりますが、今回は30周年プロジェクトとして特別な想いでオファーされたとか。
KEITA MARUYAMAデザイナー・丸山敬太さん(以下、丸山):30周年プロジェクトの『丸山百景』というキーコンセプトは、1年かけてKEITA MARUYAMAと一緒に、いろんな人やものと100個くらいの景色を作ろうよ、という気持ちでつけました。そこでラインアップを考えていく中で、SEVEN TENとのコラボはKEITA MARUYAMAとしては外せないよね、という感じでお声がけさせていただきました。
もともとお知り合いになる前から、未帆さんがゴブラン織りのKEITA MARUYAMAのスカートを履いてくださっているのを、SNSで拝見していたんです。それを見て、こういう風にうちの服を着てくれるのってすごく素敵だよねって、印刷してボードに貼っていたりして。その後、お目にかかる機会があり、今回のコラボレーションで使った柄をすごく好きでいてくださるのを知っていたんですね。
なので、今回はその柄でどうかなと思っていたのですが、未帆さんもやるならこれでやりたいと想っていてくださったので、柄はすんなり決まったんです。
――この30周年コラボのお話を聞いたとき、川人さんはどう思われましたか?
SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOデザイナー・川人未帆さん(以下、川人):私はずっとこの柄で何かをやらせていただきたかったんです。前のコラボのときにもお話しましたが、中学生のときに母についていったセレクトショップで、すごくかわいいKEITA MARUYAMAのかぎ針編みのポンチョを見て、何これ、お洋服なの?って驚いたんです。もうアートピースみたいなのに、実際に着られるっていうのが素敵!って感動して。お値段を見たら12万円くらいで、学生には到底買えるものではなかったのですが、KEITA MARUYAMAは私の中で、憧れでいつか着たいブランドだったんですね。
その後、年を重ねて初めて買ったのが、敬太さんが画像をコピーしてくださっていた水色のジャカードのスカートなんです。そういう1点物のアートみたいなお洋服を自分のコーディネートに入れるような感覚で、すごく楽しませていただいているんです。街中でマダムが着こなしていたら、あんなふうに軽々と着こなせるなんてすごい、みたいな感じで思っていたり、そういうふうに自分にとって神様みたいな存在というか、憧れの存在だったんです。
今回のコラボレーションした柄との出会いは、前職でKEITA MARUYAMAにお伺いしたことがあって、その時のコレクションでちょうど出されていたんですよね。まさに、ここ(インタビューしている場所)に飾ってあったんです。それで、めちゃくちゃかわいいと思って、なに、東屋まで描いてある、みたいな。
丸山:服の柄に入れる人はそうそういないですよね(笑)。あと、これ見て東屋って言う人もあまりいない(笑)。
川人:(笑)で、そのかわいい柄がジャカード生地になっていて、コートやスカートがあったんです。すごく興奮したものの、その時は仕事中で上司もいるし、個人的なお買い物ができるシチュエーションでもないし、その時の私にも手が届くお値段ではなかったけれど、ずっと欲しいなと思っていました。その後、独立して買えるようになったんですが、当然ながらもう同じものは売っていなくて。でも欲しすぎて、ネットで売っているのを見つけて買おうとしたら、詐欺に遭ったんですよ(笑)。
丸山:えっ?詐欺?
川人:このお話するのは初めてですよね(笑)。ネットで探したら出てきたサイトがあったので買おうとしたら、振込先が個人口座だったり、ちょっと名前もおかしかったので、2、3日置いておいたんですね。すると、この間伝えた口座が満額になったから、こっちに振り込んで欲しいと別の口座を伝えてきて。どう考えても怪しいのでさすがに振り込まなかったんですが、そんな詐欺に引っ掛かりそうになるくらい欲しかったんですよね。この柄は2012年のコレクションだったということなので、もう12年前ですね。12年間ずっと忘れられなかったんですよね。
だからKEITA MARUYAMAとコラボレーションさせていただくようになってから、絶対にいつかこの柄でやらせていただきたいと思っていました。なぜなら、自分が着たい、欲しいからという気持ちで。
丸山:今回はようやく時期とかタイミングが合った感じですよね。
川人:いいですか、使っても、みたいな感じで、もうヨダレを垂らしながら飛びつきました(笑)。
丸山:未帆さんの前職であるChestyさんというブランドとコラボさせていただいたことがあって、今回の30周年プロジェクトを進めるにあたり、いろいろな資料をひっくり返していたら、その時の柄や図案も出てきて、ああ、なんかすごくかわいいもの創ったなって改めて思い出していました。
川人:その前職時にコラボしていただいた時に、グレーのニットにブルーのストーンを置いたり、色使いなんかもすごくお勉強になって。私の中で、昔からKEITA MARUYAMAのコレクションとかを見て育ってきているので、自分のクリエイティブの元には、やっぱり敬太さんさんイズムみたいなものが、すごくある方だと思うんですよね。シノワズリに惹かれるのも、それをこう落とし込みたいって思うのも、敬太さんがそういう世界観をこの日本に作ってくださっているからなんだろうなって思って…。
丸山:なんか恥ずかしい(笑)。今回、展覧会やいろいろなコラボをやったりしているのは、僕自身が、例えばKENZOさんだったり、ゴルチェだったり、山本寛斎さんだったり憧れていた人たちがいて、その人たちのイズムみたいなものを、自分の中にやっぱり浴びてきていて、それを込みで、こうやって次の世代に届けられているというのは、すごく素敵なことだなと思っているんです。この30周年の展覧会とか、ちょっと自分の身の丈に合わないのかとも頭をよぎったんですが、そういうことよりも、自分の中に先輩たちのイズムが入っていることを、やっぱり下の世代に伝えていくことってすごく大事だなと感じていて。
おそらく未帆さんとかは、ギリギリこっち側の、アナログで仕事をしていた時代のこともわかる世代だけど、今の本当にデジタルネイティブな子たちが、これから社会に中心になっていくにあたって、例えばこの図案ひとつとっても手で描いてるようなこととか、逆にそういう子たちが知りたいことだろうなという風に思っていて。
だから、前の対談の時にも言ったんですが、やっぱり自分と未帆さんの仕事のやり方がすごく似ているんですよね。色とか柄とか、刺繍の細かい指示とか、そういうことの積み重ねが世界観を創るっていうことが、すごくわかるような、バトンを渡すよおうな30周年コラボにしたいなっていう風に、おこがましいけど思っていました。でも、実際にやってみたら、逆にもらうものが多かったんです。
川人:若い世代に対して、敬太さんってすごくオープンマインドじゃないですか。
丸山:そこに乗っかりたいっていう欲深いだけですよ(笑)。
川人:30年間ブランドを続けられていて、今の思いに至ったのって、何年くらいの時なんでしょうか?
丸山:本当に最近ですよ。でも、残したいっていう気持ちは元々ありました。デビューの時から、KEITA MARUYAMA20周年とか30周年とか、美術館とかで展覧会をやる時に取っておかなきゃダメじゃないみたいな根拠のない妄想があって、サンプルもずっと残していたし、それをずっと続けてきたから、これだけのアーカイブがあったんですね。でもそのときは、自分が、自分が、でしたね。それを、ちゃんと渡していきたいなとか、渡していかなきゃという風に思ったのは、2、3年前。
川人:高田賢三さんや山本寛斎さんがお亡くなりになったのが、それくらいの時期にありましたね。
丸山:まさにそう。その時に、この人たちのおかげで自分がいるみたいな気持ちがすごくあって、この素晴らしさを知らない人たちに伝える役目もあるなっていう風に、ちょっと想ったんですよね。生きているうちに、もっといろんなことをコミュニケートしていかなきゃと、今回の30周年のプロジェクトに繋がりました。
今回のこのジャカード生地は、自分の中ではこれで出来上がっちゃっているものだから、その柄をプリントにして新しく生まれ変わるようなことって、自分ではなかなかできないんです。だから、すごく素敵なものができてさすがだなと思いました。
川人:私はこれを着られる喜びができました。今回のコラボは2色作ったのですが、サックスのほうは元の色に近い感じで色を少し変えさせていただいていて、ブラックのほうは10年20年後も着たいな、というイメージです。今ももちろん着られるんですが、この柄は絶対に永久不滅なので、もっとミセスになった時にも着たいなって。敬太さんのお洋服の素晴らしさって、お洋服と一緒に歳を重ねられるところにもあると思うんです。このブラックベースの方は、年を重ねた時も一緒に着ていられるようにという想いを込めて、サックスベースのほうは夢を形にした感じですね。どういうものがインスピレーションになって、こういう柄を思いつくのかなっていうのがすごく不思議です。しかも30年間もずっと。 発想が切れたりしないんでしょうか。
丸山:いや、ありますよ。無理くりひねり出すこともあるし、自分に飽きることもすごくたくさんあるんだけど、自分のベースにあるのが、映画が好きとか、舞台が好きとか、漫画が好きとか、エンターテイメントが好きとかそういう気持ちなんですよね。今回、30周年でいろんなインタビューを受けたりして、改めて自分のことを考えたときに、子どものころ、やっぱりすごくガーリィな子どもだったから、姉が読んでいた例えば若草物語みたいな、そういうものを夢中になって読んでいたことを思い出しました。ジョーがパーティに着ていく背中に焼け焦げができたドレスとか、アンがおじさんに買ってもらった、パフスリーブのモスリンのワンピースってどんなワンピースなんだろうとか考える変な子どもで、活字に異常に反応していたんですよね。例えば天鵞絨っていう、言葉とかにすごく反応するというか、それがどんなものなんだろうって想像するのがすごく好きで。
次に漫画に移行すると、それが具象化していって、これって何色なんだろうって考えていました。僕は『ベルサイユのばら』をリアルタイムで読んでいた世代なんですけど、マリーアントワネットが着ていたドレスとかをほぼ記憶していて、自分の中ではそれにちゃんと色がついているのね。だから、違う色がついていると、それ違うって勝手に思っちゃう。だから今もイメージワードからコレクションをつくるんですけど、たぶんそういうところがすごく変で、オタクなんだと思う。
川人:お話聞いていて、私もそういう若草物語とかがすごく好きだったことを思い出しました。でも私の場合は映像だったんですよね、小さい時に見ていたのは。でも、ここにもういっぱいくるみボタンがついた詰襟のパフスリーブのエプロンをしてるとか、その後ろのリボンがすごくふんわり結ばれていて可愛いとか、やっぱり私の少女時代も、そういうロマンティックなものに憧れていました。私も漫画にも影響を受けているんですけど、私の場合はセーラームーンです。セーラームーンというと、どちらかというと変身後のコスチュームのイメージがあるんですけど、原作のみんなが着ている私服がめちゃくちゃ可愛いんですよ。レース使いがすごく繊細だったり、中学生なんですけど可愛い。なんかパールのピアスをしていたりとか、なんかそういうディテールがすごく凝っていて、あまりそこに着目してる子は周りにいなかったんですけど、私は完全に原作派。でも同じように色をつけて考えて、これ絶対に薄桃色だなとか、これは半透明でこういう素材で、みたいなことはすごく妄想してたので、やっぱりオタクなんだなって。
丸山:だから自分は、SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOというブランドを知って、すごく素敵なもの創ってるなっていうか、勝手にシンパシーを感じさせてもらってたんですよね。たぶん、原点にあるのがこういう共通意識なのかなと。少女的なロマンチックなものが好きなんだけど、でも基本的に甘くないんですよね。未帆さんは、中身は意外と男の人というか、おっさん入ってる感じのところがあって、それって性別の話ではなくてキャラクターの話ね。自分もどっちかっていうと、すごく可愛いものとか、ロマンチックなのとか、繊細なものとかがめちゃくちゃ好きだけど、でも基本的にどこかピリッとしていて、甘くなりすぎないようにしたいっていうのがあって。あとはトラッドだと思うんだよね。
SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOというブランドのすごく素敵なところは、すごくトラッドとか品みたいなものをベースに、ちゃんとそこをはみ出さいのがすごい。僕もそういうものを目指しているから、いつもそこにシンパシーを感じます。
川人:その掛け合わせっていうのは、やっぱりKEITA MARUYAMAの影響が大きいと思います。KEITA MARUYAMAが、私が小さい時に出会ってくださったブランドだから、そのインスピレーションを勝手に受けて、それが自分の創作物にナチュラルに出ているんじゃないかな。
丸山:そう言ってくれるとすごく嬉しいけど、でもたぶん、若草物語とか、共通しているものを何か見ているんだと思いますよ。だからすごくしっくりくるんだと思う。今回、改めて思ったんですけど、こういう風にコラボさせてもらって、自分のテキスタイルが活きるわ、すごいなと。
川人:私のほうは、すごく大切な作品なので、それを「そうじゃないんだよな」って思われてないかなとか、汚さないようにしなきゃみたいな責任を感じて、ハラハラしていました。自分が好きだからこそなんですけど、敬意を払いながら、この雰囲気を崩さないようにやっていくのに、ちょっとピリッとしながら、意識してやらせていただいたっていう感じなんで。そう言っていただけるとうれしいです。
丸山:なんなら全部、未帆さんに渡してのんびりしたいくらい(笑)。
川人:絶対にのんびりしないじゃないですか(笑)。
丸山:そうね。まだか(笑)。
川人:やっぱりケイタさんの使う色の組み合わせとか、ニットの刺繍の色とかを選ばれているところを見ると、絶対に人には任せられない人なんだろうなって。
丸山:その言葉はそのままお返しします(笑)。なんかね、未帆さんの指示書を見て、自分と同じくらい細かい指示書を、自分以外の人で初めて見ました(笑)。
川人:私は特にファッションの勉強をしてきたわけじゃなく、ファッションの学校で学ぶような専門的な知識や、デザイン方法を知らない中で独自にやってきたので、そこは敬太さんににそう言っていただけると、なんか嬉しいというか、よかったって思います。
――お互い、相手の指示書なんかを見て「こうきたか!」って思ったりしたんでしょうか?
川人:私の中で、やっぱり敬太さんは見るところがすごく細かいな、当たり前なんですけどプロだなって思いました。私はもうちょっとお客さん目線で、どちらかというと自分が着たいかどうかみたいな意識がすごく強いんですよね。なので、こだわっているとこはものすごくこだわっているんですけど、細かいシルエットよりも全体像を重視しているところがあると思います。でも敬太さんの場合は、自分が着るというより、モノとしての完成度をすごく高くするっていうのを感じましたね。
丸山:やっぱり自分が着れないから、その違いがあるんだろうな。自分は逆にそこがすごい学びで、なるほど、着る人の立場から言うと、そこのこだわりは逆になくてもいいんだっていう発見がありました。むしろその分コストが下がるなら、その方が嬉しいかもみたいなこととか、リアルに着る人のやっぱ感覚みたいなものが未帆さんはすごくわかるから。自分はもちろん着る前提ですごく考えてはいるけど、実際に着られるわけではないので、見て美しいものにこだわるところがあるかな。例えば、この1色を増やすことによって、自分にとってはすごく素敵になるけれど、もしかしたら着る側としては、余白がないかもしれないんですよね。お化粧もするし、アクセサリーも付けるかもしれない。色々なものと合わせたときに、単体としては美しいかもしれないけれど、コーディネートすると過剰なこともあるかもしれない。そういう考え方が、未帆さんは自然に身についているから、そこはいつもすごく勉強になる。
川人:でもやっぱりKEITA MARUYAMAのこの服が着たい。それがすごく存在感があった時に、どうやったら自分がその中に潜り込めるかな、みたいなことを考えるのはすごく楽しくて、そういう意味での楽しみ方っていうのもあるんだなって思います。
あと、私は意外とお客さんの気持ちを考えられていないところあると思うんです。洗いやすいとか、そういうことあんまり考えてないから、たぶん、もう1歩階段を下げて考えた方がいいのかなって思うこともやっぱりありますよ。
丸山:それはいらなくない?
川人:本当はいらないと思ってます(笑)。
丸山:だって、そういうことをやっている人たちはいっぱいいるから。やっぱり、僕がやっていることは僕しかできないことだし、未帆さんがやっていることは未帆さんしかできないことだから。それを踏襲していくことがすごく大事だと思うから。
川人:KEITA MARUYAMAもドライクリーニングオンリーですよね。うちも多いので、家で洗えるようにして欲しいって希望なんかもよく頂戴するんです。気持ちはわかるけど、それはそういうお洋服を作っているブランドさんで買って頂ければ…って思ってしまう。自宅で洗えないからこそ、かわいい生地やパーツ、凝ったシルエットが出来上がることも大いにあるので。
丸山:そうそう、その気持ちはわかるんだけど、でもね、っていう。自分はもともと、いろんな人のワードローブを全部KEITA MARUYAMAにしたいとは全く思っていないんです。なんか、その役割のところに、スッとKEITA MARUYAMAが入ってくれたらすごく嬉しいなと思っているから、出産して子どもができたら、こんな服着てられないわよって当然そうだと思うし。でも別にその期間離れていてくださっても全然良くって。でも、着た時に別の気持ちが湧いてくるようなものを創りたいと自分は思ってるから、そう考えると、そういう役割の服ってことでいいと思うんだよね。
――KEITA MARUYAMA30周年コラボですが、川人さんとKEITA MARUYAMAとの出会いの歴史でもありますよね。
丸山:SEVEN TEN by MIHO KAWAHITOって何年目ですか?
川人:8年目です。この8年の中にも、自分の気持ちや体調の波みたいなものがあって、30年って、これの3倍って思うとすごいですよね。私は自分が着たいものがあるから、ずっと作り続けているっていう気持ちのみなんですけど、敬太さんはそういうスランプというか、もうやめたいと思ったことってありましたか?
丸山:スランプはあるけれど、もうやめたいはないかも。一人で創っているわけじゃなくて、その時その時でチームがいて、一緒にやってくれる人がいて。お客様もついてきてくれてっていう中でやってきたから、自分の事情で辞めたいというのはなかったかな。
川人:KEITA MARUYAMAのお洋服って、お値段的に、すごく若い子が買えるかっていうと、そうじゃないと思んですよね。今回は、いろんなブランドさんとコラボをやってらっしゃったので、すごくハードルが下がって嬉しいなっていう風に思ったんですけど、お客様と共に年を重ねるだったりとか、こういう年代の人に向けて作ってるとかあるんでしょうか?
丸山:自分の年齢も含めて、年齢っていうものを考えることはあるんだけど、でも考えた時に、じゃあその年齢って何?みたいな。今の年齢にふさわしいものってなんですか?って言われたら、それがわかるわけではないんですよね。よく、もう年だからこういうのはどうとか言う人がいるんだけど、そういうのは全然意味がわからなくて。年齢とかというよりは、どちらかというとTPOとテイストみたいなことを考えるかな。
基本は好きなものを着てりゃいいじゃんなんだけど、やっぱりファッションってコミュニケーションだと思うから、自分はその場にある程度合わせて行ったりする方が楽しい、ドレスコードがあった方が楽しいって思うタイプ。そういうことぐらいしか考えてないかも。
あるとするなら、価格とかサイズとかで色々あると思うけど、でも年齢に関しては、本当に年齢よりテイストかな。
川人:お客様に、私50歳なんですけど、これいけますかみたいなことをよく聞かれるんです。私も、あんまりそこって関係ないんじゃないかなと思うんですけど、やっぱり気にされてる方が女性だからなのか、多いな~って思うので、それは何故なんだと。
丸山:いい年してそんな格好するなんてって言われるのが嫌ってことなのかな。
川人:似合うかどうかが自分でわからないっていう感じなんですかね。だからその感覚がよくわからなくて、50でも別に似合ってればいいじゃないって。「50歳なんですけど、いけますか」っていう質問だと、答えきれないんですよね。50歳でもいろんな人がいるから、その方がどんな50歳かによるみたいな。
丸山:むしろ肌の色はとか、髪の色はとか、そういうことの方が知りたいよね。体型的にはどんな感じですか。だから年齢って、なんかみんなとらわれすぎてるけど、年齢じゃないよなと思っていて。
川人:SEVEN TENの場合は、私が着て露出しているっていうのがあるので、やっぱりこれくらいの年齢の人がターゲットっていう風にお客さんが捉えることが多くて。私はそこを取っ払ってほしいなって思うし、長く使えるものを創っていきたいと思ってるのもあって。だからやっぱりKEITA MARUYAMAていうブランドは、本当なんかあらゆる年齢を取り込んでるイメージで、あらゆる年齢が似合って、特にあんまり自分の年齢にこだわっていない人が着ているイメージなんですよね。
以前、帝国ホテルで、ハンティング柄のミニスカートをすごく素敵に着られてるおばあ様がいらして、おばあ様も素敵なんだけど、KEITA MARUYAMAって素敵なブランドな、思ったんですよね。
丸山:でもね、前にコラボした時の、花柄のプリントのシリーズは、 本当にいろんなところで見たんですよね。しかも、ちょっといい場所……例えばパレスホテルにご飯に行ったら、着ている人がいたりして、なんかね、みんな素敵な人だった。
だからね、似合う服、似合わない服とかってよく言うんだけど、僕は最近、本当に似合う似合わないってないと思っていて、本当に好きっていうものがあったら、それをどう組み合わせるかだと思うんだよね。
これがすごい好き!と思ったら、それをどう似合わせるか。もしかしたら髪を切った方が似合うかもしれないし、袖をまくればいいかもしれないし。なんかそういうことをもっとみんな勉強……というか、ただ似合いますかと言われても、服は似合ってくれないんだけど、洋服が似合う人って服がその人に寄っていく感じってあるじゃないですか。僕、結構いろんなアーティストのかたとも仕事をするんだけど、最初着た瞬間に、一瞬「あれ、ちょっともしかして(似合わないかも)」って思う時があるの。でもね、ちょっとすると、すっごく、洋服がその人にぐーっと寄ってく、みたいな人、いるのね。おしゃれな人って、こういうことを言うんだなって思う。
でも、そういう服に対する関係性というか、やっぱり、ちょっと言葉は悪いけど、私に似合うものはなんですか?とか、私、服が似合わないんですけど、どうしたらいいんですか?とか、そういう質問に、ちょっと嫌な気持ちになりますね。
川人:ブルベなんですけどとか、イエベなんですけどとか。骨格診断でこうなんですけど、これは似合いますか?っていう質問、私もよく受けるんですけど、そんなの関係ない!みたいな。
丸山:だけど逆に、この服がすごい好きなんだけど、自分がどうやって着たらしっくりくるかがわからないって言われるんなら、こうした方がいいとか、ああした方がいいとか、めっちゃアドバイスできるんだけど、 なんかやっぱりそういう感覚がもっと世の中の人に広まってほしいなっていう風に思っている。
川人:あんまりその条件に振り回されなかったらいいのにっていうのはありますよね。
丸山:そう。なんか好きな風に自分をねじ込んでいくみたいな。インスタで未帆さんの質問コーナーとか時々やっているのを観るの好きなんですよ。いろんな質問に、結構ズバッと打ち返すじゃないですか。適当じゃないピリッとした答えをピシッと返していて、好きだな、わかりやすいなと思って観てます。うちのブランドもSEVEN TENも服が好きっていうのがベースにある人たちが、着てくれるブランドだと思うわけよ。やっぱ曲者だもん。癖があったり、匂いがあったりする、そのブランド みたいなものを、ちゃんと世界観を形成していくっていうのは、僕は未帆さんが創っている世界みたいなものがすごくわかるから、一緒にコラボしてもらって、こうして服が出来上がってきたら、やっぱり、そういうものができてきたなって思ったんですよね。
これもすごくベーシックとして、たぶん皆さん、10年後でも20年後でも着れるお洋服だなっていう風に思うから、なんか、すごくいいものができたな、ありがとうございますという感じです。
川人:私は特に思い入れのある柄を使わせていただいたのもありますし、すごく好きだからこそ、敬意を持ってアレンジをするっていう気持ちを引き締めてやらせていただけたのは、やはり30周年っていう特別なタイミングと関係があったのかなと思います。
――色は2色展開ですが、ガラッと違う2色でないのが面白いなと感じました。
川人:けっこう違うんですよ。ブラックベースの方は、お花のピンクをかなりくすませたりして、私的には、ぐっとガラッと変えたつもりではあるんです。
丸山:そこもね、いつも僕、すごく勉強になる点です。僕は色違いとなると、もう本当にバンバン……赤とブルーくらい変えて、キャラが違うものが色違いって思っちゃうんだけど、実際着るとね、この2色は本当に全く違うんです。やっぱりそれも、見てる人と着てる人の感覚の違いだなと思っていて。自分だったら、ここの花、ブルーに変えた方がよくない?ぐらいの色違いにしなきゃって思い込んじゃうのね。
川人:確かにかにそう言われると、この2色ってnearですね。
丸山:そうなの。でもでも、着る人のタイプがここで分かれるなというのは、すごく勉強になるというか、すごくわかる。サックスベースのほうは華やかで、ちょっと若めな人に好まれそうで、ブラックベースのほうはもうちょっと馴染みたいとか、実はこの中でキャラクターがくっきりと分かれている。
川人:実は好きなのに、その気持ちが疼いてるのに、柄物を着ていいのかなって躊躇してる人って、けっこういらっしゃるんですよ。そういう人にも向けたいなというのがあって。あとは創っている時は自分が着る想定なので、何と合わせるかを考えながら創るんですよね。だから、このサックスベースとブラックベースだと、私の中で合わせるものが 結構違います。サックスベースだったら、今着ているような、ちょっとふんわりした淡い色のブラウスを合わせて、ブラックベースだったら黒かカーキでちょっとシックに。形もどちらかというとふんわりしたものじゃなくって、こう、ちょっと肩パットの入ったようなもので。
丸山:その時点でもうキャラクターが違うから全く違うものっていう感覚ですよね。
川人:そうですね。私的には結構明確に違うものっていうコンセプトですね。
丸山:これがやっぱり、SEVEN TENがすごく人気の秘訣だと思います。
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■カーディガン
川人:私の中で、KEITA MARUYAMAの世界観を日常にまといたいという気持ちが、すごく強い想いとしてありました。行く場所や着る人を選ばずに、この世界を身にまとえる、このアートを身にまとえるっていうことを考えたときに、アイテムとしてはカーディガンかなと。
どなたでも着ていただきやすいという点で、プルオーバーよりもカーディガンの方が羽織るだけで華やかになりますし、使いやすい。
この柄で創りたかったので、最初はジャカードのニットで試作してみたんですが、この繊細な雰囲気がなかなか出ませんでした。それでプリント柄の布帛と組み合わせたカーディガンになりました。
■スカート
川人:スカートは、私はプリーツもフレアもどちらも好きなので絞れなかったのと、SEVEN TENでもよく創っている形なんですが、お客様がプリーツを選ぶ方とフレアを選ぶ方で、系統がはっきり分かれているんですよね。少し上の世代の方や、あまり甘い服を着ない方、 柄もあまり着ない方だと、ふわっと広がって柄が全部見えるフレアよりは、柄がこう隠れ隠れになるプリーツの方を選ばれたりとかするので、しっとりしたイメージでプリーツスカートを創りました。
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